The future of art
The Business Timesに、掲載。Sep 7, 2012
もし途方もない夢を叶えて成功したいなら、そのビジネスはまるでアート作品のようなものでなければならない。The Business Times
猪子寿之は、日本で極めて有名な、デジタル領域のさまざまなスペシャリストから構成される会社・チームラボの代表である。
コンピューターオタクの中でも数少ない夢追い人として、「会社はビジネスをする上でもっと直感的でアーティスティックでなければいけない」と彼はいう。なぜなら、今日の消費者は見る目が厳しく、その会社の商品やサービスを購入するとき“エレガントでアーティスティックなもの“を求めるからである。
猪子の視点を説明すると、彼はビルゲイツとスティーブ・ジョブズを対比させて考えている。
「1980年代、ビルゲイツはマイクロソフトを作った。彼らの商品は安くて、制作にかけた時間の割には質も良くて、効率的だった。しかし、ほとんどの人は実はあまりマイクロソフトを好んでいなかった。みんな、マイクロソフト製品にはあまり愛を感じられなかったんだ。
そこへ、スティーブ・ジョブズが現れた。彼はコンピューターの専門家でありながらアートも好きで、大学時代は書道を熱心に勉強していた。彼は自身の専門知識やデザイン能力を使い、我々の時代の象徴的な作品をいくつか作り上げ、デジタルアート領域の偉大な成功者となった。例えば、Apple ComputerやiPod、iPadやiPhoneなどは彼が手がけたものだ」
ジョブズは、デザインとテクノロジーの調和の大切さを分かっていた。だから、アップルの商品購入者層は長い間ファンで居続ける。と、猪子は言う。
「未来は、ロジカルでコストパフォーマンスが良いビジネスを必ずしも良しとするものではなくなるかもしれない。つまり、ビルゲイツが作り上げたようなビジネスモデルは、段々と衰退していくと思います」
通訳を通じて話す猪子は今、ヘルトランにあるイッカン・アート・ギャラリーでの展示会のため、シンガポールに滞在している。
「エクスペリエンス・マシーン展」と名付けられたこの展示会では、映像作品やアニメーションインスタレーションなど、数々の最先端のデジタルアートワークが展示されている。
猪子率いるチームラボは、2つのディスプレイ型のデジタル作品を展示した。一つは驚くほど美しいインタラクティブアニメーションインスタレーションで、そこでは漢字が壁に浮かび上がっている。
「風」や「蝶」など、様々な漢字を触ってみると、それらは美しくアニメーションする。あなたは、様々な言葉に触れていくことで、夢のような情景を作り出すことが可能になる。この作品名は「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」という。
猪子率いるチームラボは、様々な会社へデジタル領域でのソリューションを提案する。アパレルメーカーのデジタルサイネージや、スムーズな検索エンジンや、人気のチケットサイトなど、手がけるものは実にさまざまである。
このような作品に少しの間触れるだけでも、未来のアート、エンターテイメントを垣間みることができるだろう。