分け入ることのできる高低差のある空間で、悠久な里山の記憶を描いている。
現実の時間の流れと共に、作品世界は移ろっていく。春まだ小さく青々しい稲は、夏頃には大きく成長し、秋頃には黄金色になっていく。そして、現実の時間の流れとともに、花々なども変わっていき、ゆるやかな風の流れは人々の振舞いの影響を受けて動く。そして、人々が動き回ることで空気の流れが変わり、空気の流れによって稲や散る花びらの動きが変わる。
キャンバスが変容的なものになったことと、連続した動的なふるまいによって、身体ごと作品に没入し、人々は身体と世界との境界をも失っていくだろう。そして、一つの共通の世界が自分や他者の存在で変化していくことで、自分と他者が同じ世界に溶け込んでいく。