群蝶は、人々の足元と壁に触れた手元から現れ舞う。
蝶同士が局所的に生じる単純な相互作用によって、全体が無秩序に向かう中で、部分には秩序が生まれ続ける。
この作品は、「群蝶図」だが、空間のイリュージョンではなく、作品空間は人々の身体のある空間にそのまま存在し、空間は蝶に覆われる。
レンズやパースペクティブによる映像は、三次元的な空間を二次元平面に表す空間のイリュージョンであり、三次元空間が二次元平面の向こう側に出現し、その三次元空間と鑑賞者は別空間であり、二次元平面が境界面となる。そして、視点が固定され、身体を失う。それらとは違い、この作品は、空間のイリュージョンではなく、作品空間は人々の身体のある空間にそのまま存在する。壁や床は、鑑賞者と作品空間との境界面にならず、作品空間は、人々の身体のある空間と一体となる。鑑賞者は視点が固定されず、身体は自由である。