あらゆる次元においてボーダレスな世界観を追求しているチームラボは近年、「生命とは何か?」そして「存在とは何か?」という大きな問いをテーマに制作に取組んでいます。
例えば、海外で発表され注目を集めている作品例に、物理的には何もないはずの空間に光の球体が浮かんで見えるというものがあります。今、目に見えている世界がそこに存在しているとは限らないということ、つまり見えている世界とは、それを見ている者の認知の中にだけに存在しているということを鑑賞者に気づかせてくれる作品です。
会場は、平安時代から1千余年の歴史を刻む名刹・書寫山圓教寺の三之堂を構成する伽藍のひとつで、後白河法皇の勅願により創建された「食堂(じきどう)」(国指定重要文化財)です。現在の建物は室町時代のもので、僧侶の学問や寝食の場でした。2階建の仏堂としては日本の指定文化財の中で最大規模となる建物の1階、全長約38mの奥深い空間が、チームラボによる最新の作品空間となります。
本展では、物質的には存在しないはずの光の形や輝きが環境と認知の作用によって現象として生み出されるというチームラボ独自の作品が鮮烈に表現される作品が発表されます。
チームラボの作品空間に浸ると、その中に連続して存在する自分自身に目を向けることになります。世界は私達の外に独立してあるのではなく、私達とつながって、私達とともに、私達の中にあるものとして存在していると。「総合芸術の聖地」を提唱する書寫山圓教寺で、私達に投げかけられるチームラボの光の球体は、「生命」そして「存在」という普遍的な問いをめぐる思索へと私達を導くことでしょう。
ー 姫路市立美術館