境界面の曖昧な空間彫刻 / Spatial Sculpture with Ambiguous Boundaries
2009
なぜ、海の渦に存在を感じるのか?そして、それを生命にすら感じるのか?
渦の境界面は曖昧であり、人がその中に入ろうが、渦の存在は維持される。
作品の構成要素が空間的時間的に離れていても、つまり、自由移動したり、人々によって動かされたりしたとしても、全体もしくは部分に、密度と連続性や秩序が形成された時、一つの存在として認識され、時には生命のようにすら感じる。そして、構成要素の物理的位置は自由になり、作品の存在の境界面は、曖昧になっていく。
また、水や泡、フォグやミストなど、そもそも物体の構成要素が自由移動するものも、全体もしくは部分に、密度と連続性や秩序、もしくは認知上の連続性や秩序が形成された時、一つの存在として認識される。物体の構成要素が自由移動するので、身体との境界面が曖昧である。
FEATURED WORKS
同期され変容する空間 - teamLabBall / Synchronizing and Transforming Space - teamLabBall
teamLab, 2017, Interactive Installation, Sound: Hideaki Takahashi, DAISHI DANCE
球体は空間を自由に浮遊するが、空間全体では3次元的な映像表現を試みている。つまり、空間全体では、光は3次元的に移動するが、各球体の光は球体として物理的に移動する。音楽は空間の球体の位置や状態で変化していく。CONCEPT Spatial Objects独立したエレメントは、ネットワークなどにつながることによって、集団としてふるまい、ひとつの作品になる。エレメントが物理的に移動したとしても、集団としてのふるまいが維持される限り、ひとつの作品として認識され続ける。つまり、ひとつの作品の構成要素であるエレメントは、集団としてのふるまいが維持される限り、エレメントの物理的な位置は自由となる。 エレメント同士の密度が上がれば、集団としてふるまうエレメントは、ひとつの立体物として認識される。そして、その構成要素であるエレメントの物理的な位置は自由であるため、人は、立体物として認識したまま、その立体物の中に入っていくことができる。
もっとみるteamLab, 2015, Interactive Kinetic Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
花々が、立体的に埋め尽くされた花の塊であり、庭園である。空間は花々で埋め尽くされているが、人がいる場所では、花が上がっていくことで、空間が生まれる。そのため、人々は、花で埋め尽くされた塊の中を、自由な方向にゆっくりと歩き回ることができる。作品の中で、他者と出会うと、それぞれの空間はつながり、1つの空間になる。禅の庭園は、山の中で大自然と一体化するように修行を行っていた禅僧が集団で修行をするための場として、生まれてきたとも言われている。禅の公案に「南泉一株花(なんせんいっちゅうか)」というのがある。僧肇(そうじょう)の有名な句「天地と我と同根 万物と我と一体也」を、ある人が「也甚だ奇怪なり」と南泉和尚に問うた。南泉和尚は「時の人この一株の花を見ること夢の如く相似たり」と言ったという。本作は、人々が花々の中に埋没し、花と一体化する庭園である。花を近くで見続けると、花もまた人を見はじめる。その時、人は花と一体化し、はじめて花を見ていることになるのかもしれない。本作品の花々は、ラン科の花々である。多くのラン科の植物は、土のない場所で生き、空気中から水分を吸収する。この作品の花々は、空中で生きており、日々成長しつぼみをつけ咲いていく。空中に生えているとも言える。花が咲く植物は、植物の種類の中でもっとも最後に現れた。それにもかかわらず、陸上の植物25万種のうち、花が咲く植物は少なくとも22万種である。進化は、多様性の享受を選び、そして、花とは多様性を生むために生まれたとも言える。そして、その多様性をもっとも享受したのがランである。陸上にある全ての植物の種類の約10%は、ラン科の植物とも言われている。多様性を享受したランの多くは、他の植物でいっぱいであった土の上ではなく、他の植物のいない岩や木の上など、土のないところに最適化していった。土のない場所、つまり、これまでの植物にとっては非常識的に環境が悪いがゆえに、競争のない世界に最適化したランの多くは、進化のもっとも最後の方に現れたと考えられ、今もなお多様化し続けている。進化は何を選んだのか、考えさせられる。また、ランは花粉媒介を行う特定の昆虫との共進化の例で知られており、パートナーの昆虫の行動する時間に合わせて香りが強くなる。そのため、作品空間は、朝、昼、夕、夜と、空間の香りが刻々と変わっていく。本作品のランは夜行性の昆虫がパートナーであるランが多いため、夜の超高密度のランによる香りは、圧巻である。
もっとみるteamLab, 2019, Interactive Installation, LED, Endless, Sound: teamLab
数百個の光るもの達が走る。光るもの達は、それぞれ自律しており、まわりの光るもの達の状況に合わせて、走る速度を変えながら、時には、エネルギーを補充しながら走り続ける。光るもの達は、ゆっくりと呼吸するかのように明滅する。光るもの達は、人が近くにいると強く輝き音色を響かせる。そして近くの光るもの達から、連続的に呼応し、光は伝播していく。人々はきっと、同じ空間にいる他の人々の存在を感じるだろう。
もっとみるteamLab, 2019, Interactive Digital Installation, Sound: Hideaki Takahashi
空間は、光のovoid(卵形体)によって立体的に埋め尽くされている。人々はovoidをかき分け、空間の中に入っていく。人々は、空間を、曖昧な色で光るovoidの群によって立体的に認識したり、単色に満たされることによって平面的に認識したりと、立体と平面とを行き来しながら、立体と平面に身体ごと埋没していく。光のovoidは、人に叩かれ衝撃を受けると、色を変化させ、色特有の音色を響かせる。そのまわりのovoidは、近くのovoidから、放射状に連続的に呼応し、同じ色になり同じ音色を響かせていく。各ovoidが自由に移動し、どこにあったとしても、空間全体としての光のふるまいは維持される。そのため、集団としてふるまう光は、ひとつの立体的な存在とも言える。今回は、衝撃を受けたovoidを中心として、球状に光が広がっていく。人々は、光の立体的な存在として認識しつつ、ovoidをかき分け、その立体的存在の中に入っていく。ovoidは、光だからこそ発色できる曖昧な9色(水の中の光、水草のこもれび、朝焼け、朝空、たそがれ時の空、桃の実、梅の実、花菖蒲、春もみじ)と、空間を平面化する3色(青、赤、緑)の計12色の色に変化していく。
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