Relationships Among People
2001
人々の関係性を変化させ、他者の存在をポジティブな存在に変える
例えば、絵画は鑑賞者の存在やとなりの人のふるまいによって変化しない。作品は個人との関係の上に成り立っている。少なくとも、これまでのアートの多くは、鑑賞者にとっての他者の存在は、単に邪魔な存在だった。展覧会に人がいなければ、すごくラッキーだと思う。
作品が、鑑賞者の存在やふるまいによって変化する時、鑑賞者と作品との境界線はあいまいになる。作品は、鑑賞者を含めて作品となっている。そして、同じように、他者の存在でアートが変化したとき、他者もアートの一部になる。そのことは、作品と個人との関係を、作品と集団との関係へと変えていく。5分前に他の鑑賞者がいたかとか、今、となりの人がどんなふるまいをしているかが、重要になってくる。
デジタルアートは、同じ空間にいる人々の関係性に変化を与えることができるのだ。
そして、他者がアートに介入したり操作したりする意思があるかないかは関係なく、他者の存在によるアートの変化が美しければ、他者の存在はポジティブなものにもなりえるだろう。
アートだけではなく、近代の都市において、他者の存在は人間にとって不快なもの。理解もできないし、コントロールもできない他者が周囲にいることは、我慢して受け入れるものだった。それは、都市が自分や他者の存在によって、変化しないからだ。都市が、デジタルアートになるならば、都市においても、他者の存在がポジティブな存在になる可能性があると考えている。そのように、このデジタルアートによる人々の関係性への模索は、アートの領域を超え、都市のありようを考え直すきっかけとなるだろう。
FEATURED WORKS
teamLab, 2014, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
国東半島に生息している花々をモチーフにしており、一時間を通して、国東半島の一年間の花々が移り変わっていく。花は生まれ、成長し、つぼみをつけ、花を咲かせ、やがて散り、枯れて、死んでいく。つまり、花は誕生と死滅を、永遠に繰り返し続ける。 花は、鑑賞者のふるまい(ある一定の距離間でじっとしている、もしくは、花に触ったり、踏みながら歩きまわること)によって、花は、より生まれいっせいに咲き渡ったたり、もしくは、いっせいに散り死んでいったりする。作品は、コンピュータプログラムによってリアルタイムで描かれ続けている。あらかじめ記録された映像を再生しているわけではない。全体として以前の状態が複製されることなく、人々のふるまいの影響を受けながら、永遠に変化し続ける。今この瞬間の絵は二度と見ることができない。春、国東半島に訪れた際、山の中の桜やふもとの菜の花を見ているうちに、どこまでが人が植えたものなのか、どこまでが自生している花々なのか疑問に思った。そこは多くの花に溢れ、非常に心地よい場所だった。そして、その自然が、人の営みの影響を受けた生態系であることを感じさせる。どこまでが自然で、どこからが人為的なのか、境界が極めてあいまいなのだ。つまり、自然と人間は対立した概念ではなく、心地良い自然とは、人の営みも含んだ生態系なのであろう。そして、近代とは違った、自然に対して、人間が把握したり、コントロールしたりできないという前提の自然のルールに寄り添った人の長い営みこそが、この心地良い自然をつくったのではないだろうか。その谷間の人里には、以前の自然と人との関係が、ほのかに残っているように感じられ、コントロールできないという前提の下での、自然への人為とはどのようなものなのか、模索したいと思う。
もっとみる世界はこんなにもやさしくうつくしい / What a Loving, and Beautiful World
Sisyu + teamLab, 2011-, Interactive Digital Installation, Endless, Calligraphy: Sisyu, Sound: Hideaki Takahashi
文字は、それぞれ世界を持つ。人々が文字に触れると、その文字がもつ世界が現れ、それらは互いに影響し合い、1つの世界を創っていく。雨や雪や花は、風の影響を受けるし、鳥は木にとまり、蝶は花に近づいていく。他の作品も、文字に触れると文字のもつ世界が現れる。人々によって生まれた世界が、他の人々や、他の作品によって生まれた世界と影響し合い、新たな絵を創っていく。今この瞬間の絵は二度と見ることができない。作品は、時には、はるか遠くまで広がっていく。
もっとみるteamLab, 2018, Interactive Digital Installation, Sound: Hideaki Takahashi
背景では、桜が咲いては散り、生と死を繰り返す。そして、人々と空間の接触部分から、一定のリズムと特定の間隔で放射状に広がるように円が生まれ大きくなっていく。生まれてくる円は、背景の世界の明暗だけを変える。
もっとみるteamLab, 2014, Interactive Digital Installation + Light Sculpture, LED, Endless, H: 14700mm W: 17200mm D: 3840mm, Concept design, production and execution supervisor: DEM inc.
本作は巨大なLEDによる彫刻であり、インタラクティブデジタルインスタレーションでもある。空から降った雨により滝が生まれ、流れ出た滝は川となり、大地では花が生まれ、咲き散っていく。花や木の周りに鳥が集まり、鳥たちは空へと飛び立っていき、空では雲が生まれ、流れていく。すべては連続し循環していくが、コンピュータプログラミングで描かれているため、二度と同じ状態にはならない。本作品は、あらかじめ記録された映像を再生しているわけではなく、鑑賞者のふるまい、時間、季節や、気温、天候、会場であるCTBC Financial Parkのさまざまな状況などの外部データの影響を受けながら、永遠に変容し続ける。
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